final E5000
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概要DETAIL
最新の音響工学、心理学の研究成果を踏まえ、音質設計を行いました。高域に鋭いピークを持たせ、ある部分を強調するという一般的な音作りの手法を使うと、一聴して鮮やかさを感じさせるのですが、そのピークによって、前後の帯域がマスキングされて聴こえにくくなってしまいます。Eシリーズでは周波数特性のカーブを全体に滑らかにする事で、マスキングされる帯域を作らず、高い解像度を実現しました。E3000/E2000と比較すると、より味付けの無いピュアで繊細な音に仕上がっています。 *全ての音域での解像度を高める為に、音圧は低めとなっています。一聴すると大人しく聞こえますが、その繊細さを感じながら、音圧を徐々に上げていくと、心地良くご試聴いただけます。長く使うほどに良さを感じられる製品です。
長所
- +L字型音響チャンバーが生み出す、立ち上がりが速くパンチの効いた低域
- +心理学的低音圧チューニングによる自然なティンバーで、帯域の境目が途切れない一体感
- +Junkosha製ケーブルとステンレス筐体のビルドクオリティで、E4000から明確に格が上がる
短所
- -高域のキャラクターが薄く、アコースティック楽器の倍音成分が大人しすぎる
- -半開放的なベント構造による音漏れが顕著で、E2000より悪化している
- -感度93dBで鳴らしにくく、出力の弱いソースでは低域の量感が十分に引き出せない
総合レビューREVIEW
finalがEシリーズの頂点として送り出したE5000は、E2000・E3000というエントリー機から始まり、アルミ筐体のE4000を経てたどり着いたシリーズ最上位です。ドライバーはシングル6.4mmダイナミック一発。ステンレスのミラー仕上げ筐体にMMCXコネクタ、ケーブルはJunkosha社製の銀メッキOFCを採用しています。E4000から比べると筐体素材がアルミからステンレスに変わって重量が18gから24gに増え、ケーブルも銅から銀メッキに変更、感度は97dBから93dBへと下がっています。4万円前後のシングルDDという数字を見て身構えましたが、これが実際に鳴らしてみると予想と違いました。 93dBという低感度で出力を要求する設計なので、最初は音が出にくいのかと思っていました。実際は逆で、音のファーストインプレッションは不必要に押しつけてこない、落ち着いた入り方をします。finalが「心理学的チューニング」と呼ぶアプローチで、音圧を下げることで全帯域の解像度を引き上げるという設計思想の効果が、ここに出ています。使い込むほど良さが分かってくる、じわじわ型の機種です。 このIEMで一番はっきりしているのは低域の出方です。ベースラインが鳴り始めた瞬間の沈み込みが速く、量感はありながら膨らみに抑制が利いています。キックが速いテンポで続く打ち込みの音源でも、音の出始めにタイトさが残ります。ズシっとくる重さより出始めの衝撃が印象的で、この直接的なパンチ感はE4000よりスケールが一段上がっています。L字型音響チャンバーとダイアフラム後方の音響レジスターがうまく機能しているのでしょう、低域がそのまま中域方向にだらりと伸びる感じはなく、一定のラインで収束します。 この設計の恩恵は中域にも及んでいます。ボーカル帯域は整っていて、帯域の境目に段差が出ません。ジャズのアルトサックスが吹き出す瞬間の胴鳴り感や、男性ボーカルのブレスの処理が素直で、長時間聴いて疲れる種類の音を出しません。ただ、細部をハイライトして前に出してくるタイプではなく、声の位置は奥に控えめです。ベースラインと声がちょうど同じ奥行きに並んでいるような距離感で、クリアに情報を整理してくれるというより、音楽として自然に溶け合わせる方向に振られています。 個人的には、高域の落ち着きはこのIEMの性格上「仕様」と理解するのが正直なところです。シンバルのクラッシュ後の余韻は短めに収まり、弦楽器の弓の摩擦感もやや抑えられています。刺さる帯域はどこにもなく長時間のリスニングに向きますが、高い音域に輝きや空気感を求めると物足りません。 音の広がりは水平方向には十分で、左右のステレオフィールドが自然に広がります。ただし前後の奥行きという点では、同じ4万円台の Binary EP321(7BAシングル構成)と比べると差が出ます。meaty な低域が中域側に寄ってくるため、複数パートが重なるサビやピアノトリオの密な録音では輪郭が甘くなってきます。楽器を一本一本切り分けて聴くより、音楽全体を俯瞰して聴く機種です。 実用面での確認が必要な点が二つあります。ひとつは音漏れで、外観上は密閉型に近いシェルですが、ベントが機能しているため音漏れはE2000よりも多いです。電車の中では音量を絞らないと周囲に聴こえます。外音遮断はベンテッドDDとしては優秀で、作業中の使用に問題はありませんでした。もうひとつはケーブルです。Junkosha製で素材・耐久性は業界平均の10倍の基準をクリアしていますが、編み込みが硬くケーブルダウン装着では擦れ音が気になります。屋外で使うならケーブルアップが事実上の前提になります。ただしMMCXコネクタなのでリケーブルの選択肢はあります。 総評:E5000はシングルDDの設計に音響心理学的なアプローチを組み込んだ機種で、その成果は低域の質感と帯域全体の自然なつながりにはっきり現れています。finalの設計思想に乗れるなら4万円を出す説得力は十分あります。ただし高域のキャラクターの薄さと分離の甘さは、同価格帯の技術志向の機種と比べると差として残ります。ベースラインが前に出るジャズや、ボーカルを落ち着いて聴く時間が長いリスナーに合っている機種だと思います。
— Gadgetal編集部
スペックSPECIFICATIONS
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